鳥取 地震の帯

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[産総研(産業技術総合研究所)・活断層データベース]によると、
鳥取県の東部には、ほぼ東西方向に延びる右横ずれ断層の鹿野活断層、岩坪活断層があります。 西部には、北西-南東方向に延びる左横ずれ断層の日南湖活断層、小町-大谷があります。
1943年鳥取地震 M7.2(図1中の(5))は鹿野活断層で発生しました。 2000年鳥取県西部地震 M7.3(図1中の(9))は、日南湖活断層と小町-大谷活断層の間で発生しました。 M7級の地震ですが、地表に地震断層はみられませんでした。
鳥取県中部には活断層はみられませんが、1710年M6.5(図1中の(2))、1943年M6.0(同(6))、 1943年M6.2(同(7))、1983年M6.2(同(8))、2016年M6.6(同(10))等、M6級の地震が多発しています。
これらの地震の断層型は横ずれで、図1にみるように、日本海の海岸線に沿って起きています。 山陰地震帯などと言われています。

図1 起震断層
図1 起震断層・セグメント

起震断層・セグメント
活動セグメント名一般走向一般傾斜長さ断層型変位の向き
鹿野(しかの)N 80°E90°V13 km右横ずれ-
岩坪(いわつぼ)N 90°E90 °V10 km右横ずれS(隆起側)
小町-大谷(こまち-おおだに)N 30°W90°V12 km左横ずれ-
日南湖(にちなんこ)N 40°W90°V15 km左横ずれ-
[地図外] 雨滝-釜戸(あめたき-かまと)N 60°W90°V16 km左横ずれ-

鳥取(西部・中部)で起きた主な地震
-年月日Mag緯度経度深さその他
(1)880/11/23M 7.0N 35.383°E 133.183°10 km出雲地震(島根県)
(2)1710/10/03M 6.5N 35.500°E 133.683°15 km鳥取県中部
(3)1943/03/04M 6.2N 35.4432°E 134.1048°5 km鳥取県東部
(4)1943/03/05M 6.2N 35.4663°E 134.2365°9 km鳥取県東部
(5)1943/09/10M 7.2N 35.4732°E 134.1840°-鳥取地震
(6)1943/09/10M 6.0N 35.3492°E 133.9217°-鳥取県中部
(7)1943/09/11M 6.2N 35.4357°E 133.9007°15km鳥取県中部
-1949/01/20M 6.3N 35.5995°E 134.4792°14km兵庫県北部
(8)1983/10/31M 6.2N 35.4167°E 133.9233°15km1983年鳥取県中部地震
(9)2000/10/06M 7.3N 35.2742°E 133.3490°8km2000年鳥取県西部地震
(10)2016/10/21M 6.6N 35.380°E 133.856°10km2016年鳥取県中部地震

地震の帯
ここでは個別の大地震と既存活断層の対応というアプローチではなく、地震帯という側面から日本海沿いの鳥取周辺地下を探ってみました。
渡辺邦彦著「西日本の地殻ブロック構造と地震活動」では、活断層と地震活動(微小地震を含む)の関連を分析し、 西日本の地殻が複数の地殻ブロックから構成されていると考え、地殻ブロックの境界では地震活動が活発に行われ、大地震もその境界で発生している等、 西日本の地殻ブロック境界での地震活動を論じています。
この考えによれば、鳥取周辺の地震帯の正体は、地殻ブロックの境界での地震活動ということになります。 最近のGPS観測での解析で、西村卓也著「山陰地方のひずみ集中帯」にみるように、日本海沿いの地下深くで、右横ずれのゆっくりすべりが進行している等、 西日本のブロック境界、ブロック構造が明らかにされつつあります。
論文に掲載されている図(Fig.8を図2に転載しました。)から、鳥取周辺の地震帯、帯の形状を作成してみました。 「気象庁 一元化震源リスト」(「Hi-net 高感度地震観測網」の震源情報)2016年12月までの地震データを使用して震源分布を描き、図2と重ねてみたのが図3です。 ブロック境界のライン形状から走向を読み取り、帯の幅を調整して、図4のように鳥取周辺の地震帯を描いてみました。
この地震帯データを用いて、1940年 - 2016年の震源の水平、鉛直分布を図5、図6に描きました。
この地震帯の中に震源の空白域がありますが、大山(火山)の地下にあたるところです。

図2 地殻ブロック Fig.8(渡辺邦彦) 図3 地殻ブロック境界(一部)と地震
図2 地殻ブロック Fig.8 (渡辺邦彦) 図3 地殻ブロック境界(一部)と地震

図4 鳥取の地震帯 図5 鳥取の地震帯と震源分布(水平) 図6 鳥取の地震帯と震源分布(垂直)
図4 鳥取の地震帯 図5 鳥取の地震帯と震源分布(水平) 図6 鳥取の地震帯と震源分布(垂直)

鳥取日本海沿いの地震活動
1943年鳥取地震、2000年鳥取県西部地震、2016年鳥取県中部地震の3つを震源球で並べて描きました(図7)。 3つとも地震帯で発生、震源球の形も似ています(横ずれ断層)。
鳥取県の東部と西部・中部では地殻にかかる力に大きな差はありませんが、 地震の起こる場所によって、断層が破壊する方向に特徴がみられます。 1943年鳥取地震は右横ずれ型で、断層の走向は西-東(沿岸沿い)方向、 2000年鳥取県西部地震と2016年鳥取県中部地震は左横ずれ型で、断層の走向は北西-南東(沿岸沿いに直角の方向)方向。 共役な関係になっています。

図7 3つの地震の震源球
図7 3つの地震の震源球

1943年鳥取地震の余震
1943年9月 - 1945年12月の震源データを図8に描きました。 この時期のデータは少ないのですが、そのデータでも余震は鳥取県中部にまで及んでいます。
1983年鳥取県中部地震
1983年10月31日、M6.2の1983年鳥取県中部地震が中部で発生(図9の水色)。図9は、1983年10月 - 1999年12月の震源分布です。
この地震は左横ずれ型で、断層の走向は沿岸沿いに直角の方向でした。
図9に描かれている地震は、1943年鳥取地震から40年後 - 2000年鳥取県西部地震の直前の震源データです。 中部での余震だけでなく、西部では、2000年鳥取県西部地震と重なる領域に地震が発生していました。
2000年鳥取県西部地震の余震
図10は、2000年鳥取県西部地震の余震分布(2000年10月 - 2004年12月)です。
本震は北側では複雑な破壊が進行したようです。本震直後は震源断層面に沿って余震が発生、 特に北側では地震活動が活発化して余震域が広がっています。 その後、地震帯に沿って中部にも地震活動が広がっています。
2016年鳥取県中部地震の余震
2016年10月21日、M6.6の地震が中部で発生。2016年10月 - 2017年2月の震源データを図11に描きました。
中部での余震だけでなく、西部では、2000年鳥取県西部地震の震源断層面に沿って直線上に地震が発生しています。

鳥取日本海沿いの地震は、「地震帯」という地下深くのトンネルのようなもの(地殻ブロックの境界面)を通してつながっているように思われます。

図8 1943年鳥取地震の余震 図9 1983年鳥取県中部地震の余震
図8 1943年鳥取地震の余震 図9 1983年鳥取県中部地震の余震
図10 鳥取県西部地震の余震 図11 2016年鳥取県中部地震の余震
図10 2000年鳥取県西部地震の余震 図11 2016年鳥取県中部地震の余震

2000年鳥取西部地震の誘発地震
本震の2日後、2000年10月8日、M5.6の左横ずれ型地震が発生しました(図12)。 応力場変化により誘発された地震とされています。

図12 2000年鳥取西部地震の誘発地震
図12 2000年鳥取西部地震の誘発地震

西日本日本海沿いの地震帯
調子に乗って、帯を伸ばしてみました(図13、図14)。データは1940年以降で検索しています。

図13 西日本日本海沿いの地震帯(水平) 図14 西日本日本海沿いの地震帯(垂直)
図13 西日本日本海沿いの地震帯(水平) 図14 西日本日本海沿いの地震帯(垂直)

[参考] 震源断層パラメータ情報
1943年鳥取地震の震源断層パラメータ
緯度経度上端深さ長さ走向傾きすべり角すべり量
35.44°134.00°0 km33 km13 km80°90°180°2.5 m
※位置は断層の左上端。
「日本の地震断層パラメター・ハンドブック」鳥取地震モデル1より

2000年鳥取県西部地震の震源断層パラメータ
緯度経度上端深さ長さ走向傾きすべり角すべり量Mw
133.305°35.357°0.9 km9.8 km20.5 km152°86°-7°1.4m6.6
※位置は断層の左上端。複数枚モデルでは、共役断層の関係にある右横ずれ型のすべりも推定。
鷺谷・西村他「2000年鳥取県西部地震に伴う地殻変動と断層モデル」より

2000年鳥取県西部地震の初動解パラメータ[防災科研より]
緯度経度深さ節面1節面2Mw
走向傾きすべり角走向傾きすべり角
35.27°133.34°11km150°85°-9°241°81°-175°6.6

2016年鳥取県中部地震の震源断層パラメータ[国土地理院より]
緯度経度上端深さ長さ走向傾きすべり角すべり量Mw
133.84°35.50°0.5km17.9 km12.9 km163°73°-3.7°0.31 m6.16
※位置は断層の左上端

2016年鳥取県中部地震地震の初動解パラメータ[防災科研より]
緯度経度深さ節面1節面2Mw
走向傾きすべり角走向傾きすべり角
35.38°133.85°10km342°80°250°81°170°6.2


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