いわき 3・11後、地震活動が活発

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2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(M9.0)後、福島県いわき周辺では正断層型の地震活動が活発になりました。
まず、いわき周辺の主な正断層型活断層についてみます。
[産総研(産業技術総合研究所)・活断層データベース]によると、
井戸沢活断層は、福島県南東部、阿武隈山地南部をほぼ南北方向に延びる東側隆起(西側が沈降)の正断層で、 2011年4月11日福島県浜通り地震(M7.0)に伴って一部に地震断層が出現した、とあります。
井戸沢断層の西側寄り断層は塩ノ平断層とも言われています。4月11日の福島県浜通り地震M7.0の震源は塩ノ平断層面にあります。
湯ノ岳活断層は、福島県南東部を北西-南東方向に延びる北東側隆起(南西側が沈降)の正断層で、 同2011年福島県浜通り地震に伴って活断層のほぼ全域に地震断層が出現した、とあります。
現地調査報告書によると、井戸沢活断層、湯ノ岳活断層ともに既存の活断層の延長部にまで地震断層が現れたとあります。
二ッ箭(ふたつや)活断層は、福島県南東部を北西-南東方向に延びる北東側隆起の正断層。 2011年福島県浜通り地震では地震断層は出現しなかったようです。

図1 活断層と主な地震
図1 活断層と主な地震

いわき周辺の正断層型活断層
活動セグメント名一般走向一般傾斜長さ断層型変位の向き
井戸沢(いとざわ)N10°W70°W13km正断層E(隆起側)
湯ノ岳(ゆのだけ)N60°W60°S13km正断層N(隆起側)
二ッ箭(ふたつや)N50°W60°S11km正断層N(隆起側)

周辺で起きた主な地震
--年月日Mag緯度経度深さその他
(1)2011/03/23M 6.0N 37.0848°E 140.7878°7km福島県浜通り
(2)2011/03/23M 5.8N 37.0353°E 140.7693°0km福島県浜通り
(3)2011/03/23M 5.5N 37.0982°E 140.7958°6km福島県浜通り
(4)2011/03/23M 5.8N 37.0633°E 140.7707°7km福島県浜通り
(5)2011/04/11M 7.0N 36.9457°E 140.6727°6km2011年福島県浜通り地震
(6)2011/04/11M 5.7N 36.8913°E 140.7152°9km福島県浜通り
(7)2011/04/11M 5.9N 36.9658°E 140.6348°10km福島県浜通り
(8)2011/04/12M 6.4N 37.0525°E 140.6435°15km福島県中通り
(9)2011/04/13M 5.7N 36.9152°E 140.7068°4km福島県浜通り

2011年4月11日 福島県浜通り地震 M7.0
2011年3月23日に湯ノ岳断層の北側でM5.5 - 6.0が集中し、4月11日に井戸沢断層でM7.0の地震が発生しました。
国土地理院の合成開口レーダー(SAR)解析画像をみると、地表でのずれの様子をはっきりとみることができます。(図2)
湯ノ岳断層も含めた複数枚の震源断層モデルも解析されていますが、ここでは1枚モデルで描きました(図3)。
走向は北西-南東、南西側に傾き下がる正断層型です。

図 SAR画像 図 年地震
図2 国土地理院のSAR画像 図3 地震の震源断層

地震の震源断層パラメータ[国土地理院より]
緯度経度上端深さ長さ走向傾きすべり角すべり量Mw
37.024°140.665°0.3km10.5km7.4km134°62°-90°4.51m6.61
※位置は断層の左上端

地震の初動解パラメータ[防災科研より]
緯度経度深さ節面1節面2Mw
走向傾きすべり角走向傾きすべり角
36.94°140.67°6km132°50°-82°301°41°-99°6.6

引張場での地震活動
3・11地震以前は、太平洋プレートの沈み込みにより東北、関東の地殻は東西方向の圧縮場で、逆断層型の地震が普通でした。 3・11地震で東北、関東の地殻は太平洋側に大きく変位し、圧縮場から引張場へと変わりました。 6年経った今も変位量が小さくなったとはいえ、太平洋側へと変位を続けています。
引張場では正断層地震が起こりやすいといわれています。地殻を引張る力の方向(T軸)が水平方向に、 圧縮する力の方向(P軸)が垂直方向に卓越すると、正断層型の断層のずれが生じます。
防災科研の初動解データ(検索期間:2011年03月11日 - 2011年04月30日。深さ20km以内)と震源球図から P軸(最大圧縮応力軸)、T軸(最小圧縮応力軸)情報をまとめてみました。
T軸の方位はW-E、NW-SE方向が卓越し、傾きは低角度が卓越。P軸の傾きは高角度が卓越。 データ222件のうち、正断層型が193件(87%)を占めています。

図4 P軸(水平) 図4 T軸(水平)
図5 P軸(垂直) 図5 T軸(垂直)
図4 P軸分布 図5 T軸分布

-軸の方位軸の傾き
N - SNE-SWW - ENW-SE低角度中角度高角度
P軸(最大圧縮応力軸)41件(18%)49件(22%)55件(25%)77件(35%)19件(9%)41件(18%)162件(73%)
T軸(最小圧縮応力軸)26件(12%)51件(23%)76件(34%)69件 (31%)195件 (88%)18件 (8%)9件 (4%)
N軸(中間圧縮応力軸)71件(32%)74件(33%)26件(12%)51件 (23%)198件 (89%)19件 (9%)5件 (2%)

2011年3月 - 4月の地震活動
「気象庁 一元化震源リスト」(「Hi-net 高感度地震観測網」の震源情報) (検索期間:2000年01月01日 - 2011年04月30日、深さ 20km以内)を使用して、震源を描画してみました。(図6~図9)
検索範囲内で、A~Cに含まれる件数も表にしました。
3・11前の地震活動は低調でした。2000年1月 - 2010年12月の間に検索範囲で発生した地震は364件で、規模も小さいものでした。
3・11後、まず、南のCブロックで、2011/03/11 M5.5、2011/03/19 M6.1が発生。地震活動が活発化しました。A、Bではまだ活発化していません。
次に、Aブロックで03月23日に、M 6.0、M 5.8、M 5.5、M 5.8と連続発生しました。地震が井戸沢断層に向かっているかのようです。
そして、Bブロックで04月11日に、検索範囲内で最大のM7.0が発生しました。04月11日、M 5.7、M 5.9、同12日、M 6.4、13日、M 5.7と、井戸沢活断層あるいは湯ノ岳活断層で発生しました。
その後の04月16日 - 月末では、A - Cで地震活動が活発になりました。

図6 図7
図6 03/11 - 03/22 図7 03/23 - 04/10
図8 図9
図8 04/11 - 04/15 図9 04/16 - 04/30

期間2000-201003/11-03/2203/23-04/1004/11-04/1504/16-04/30
M0、11031015773161200
M2、3284321166210
M403544
M500400
M6 ~00100
Aの小計105(29%)188(8%)908(16%)486(9%)1414(16%)
M0、1323111716062504
M2、3239881225487
M40217013
M500070
M6 ~00020
Bの小計34(9%)72(3%)206(4%)2910(56%)3004(33%)
M0、1361214354511213574
M2、35791839417548
M401814115
M503010
M6 ~01000
Cの小計41(11%)2027(85%)4398(77%)1550(30%)4127(46%)
検索範囲 計3642394567751669032



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