千葉県沖 震源断層データからみる千葉県東方沖周辺の地下

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【実験版】特定のスペックをもつ複数の震源断層(震源断層群)の分布から仮想断層面を求めてみました。

千葉県東方沖では、東南東の方向から太平洋プレートが沈み込み、さらに太平洋プレートの上にはフィリピンプレートの沈み込みもあり、 複雑な力がかかっています。
今回の地震の対象は図1の点線で囲んだ薄水色の範囲(中心緯度35.71°、経度141.03°、約80×60kmの矩形、走向0°)です。
対象範囲で発生した主な地震 (1923年-2017年、M6.0以上)を表にまとめました。
2011/03/16 M6.1、2012/03/14 M6.1は正断層型、2011/04/12 M6.4は横ずれ型です。
図1 対象地域で起きた主な地震
図1 対象地域で起きた主な地震

対象地域で起きた主な地震(M6.0以上)
年月日Mag緯度経度深さその他
1923/05/31M 6.1N 35.8237°E 141.3288°20km茨城県沖
1923/09/02M 6.3N 35.7147°E 141.1090°15km千葉県東方沖
1924/02/03M 6.2N 35.7328°E 141.2520°19km千葉県東方沖
1926/07/11M 6.0N 35.9827°E 141.1183°0km茨城県沖
1929/06/27M 6.0N 36.0577°E 141.2913°16km茨城県沖
1932/06/22M 6.3N 35.8082°E 141.3565°28km茨城県沖
1937/10/17M 6.6N 35.6132°E 141.1627°29km千葉県東方沖
1947/01/03M 6.0N 35.4772°E 141.0165°3km千葉県東方沖
1954/07/18M 6.4N 35.6743°E 140.8855°27km千葉県東方沖
2011/03/16M 6.1N 35.8370°E 140.9065°9km千葉県東方沖
2011/04/12M 6.4N 35.4817°E 140.8680°26km千葉県東方沖
2012/03/14M 6.1N 35.7477°E 140.9320°15km千葉県東方沖

震源断層情報
防災科研(防災科学技術研究所)の初動解パラメータ・データ(「F-net 地震のメカニズム情報」)を使用して今回の対象範囲の震源断層情報を調べてみました。
図2-1内の点線で囲んだ検索エリア内で、1998年01月01日 - 2010年12月31日の期間(2011年東北地方太平洋沖地震の前)、深さ40km以内で検索し、63 件の震源断層データを得ました。 T軸の傾きが高・中角度で67%、P軸の傾きが低・中角度で88%、N軸の傾きが低角度73%と、東北地方太平洋沖地震の前は逆断層型が卓越していました。
図2-2は同じ検索エリアで東北地方太平洋沖地震の直後、2011年03月11日 - 2012年05月31日の期間、深さ40km以内で検索し、316 件の震源断層データを得ました。 P軸の傾きが高・中角度で80%、T軸の傾きが低角度で66%、N軸の傾きが低角度72%と、東北地方太平洋沖地震後は正断層型が卓越しました。
節面情報による断層型分類でも、2011年東北地方太平洋沖地震前は逆断層が約60%、正断層が約20%でしたが、2011年東北地方太平洋沖地震後は正断層が約60%、逆断層が約20%と大きく変化しました。

図2-1 東北地方太平洋沖地震前の震源断層の分布 図2-2 東北地方太平洋沖地震直後の震源断層の分布
図2-1 東北地方太平洋沖地震前の震源断層の分布 図2-2 東北地方太平洋沖地震直後の震源断層の分布

1998年1月1日 - 2010年12月31日
-軸の方位軸の傾き
N - SNE-SWW - ENW-SE低角度中角度高角度
P軸(最大圧縮応力軸)17件(25%)8件(12%)36件(54%)6件(9%)35件(52%)24件(36%)8件(12%)
T軸(最小圧縮応力軸)11件(16%)15件(22%)34件(51%)7件 (11%)22件 (33%)27件 (40%)18件 (27%)
N軸(中間圧縮応力軸)33件(49%)10件(15%)13件(19%)11件 (17%)49件 (73%)16件 (24%)2件 (3%)

2011年3月1日 - 2012年05月31日
-軸の方位軸の傾き
N - SNE-SWW - ENW-SE低角度中角度高角度
P軸(最大圧縮応力軸)116件(37%)60件(19%)71件(22%)69件(22%)62件(20%)136件(43%)118件(37%)
T軸(最小圧縮応力軸)20件(6%)47件(15%)203件(64%)46件 (15%)207件 (66%)85件 (27%)24件 (7%)
N軸(中間圧縮応力軸)178件(56%)50件(16%)32件(10%)56件 (18%)228件 (72%)72件 (23%)16件 (5%)

震源断層データの絞込み
注目する地震の震源断層パラメータは、
  2011/03/16、M6.1、正断層型、緯度 35.8370、経度 140.9065、深さ 9km、走向 9°、傾き 39°
  2012/03/14、M6.1、正断層型、緯度 35.7477、経度 140.9320、深さ 15km、走向 30°、傾き 48°
です。検索する震源断層データのスペックは、正断層型、傾きは高・中角度、走向はNまたはNEとしました。

震源断層フィルターの設定
直方体のフィルターを使って、震源断層データのパラメータが指定したスペックに適合するかどうかをチェックします。
試行を繰り返し、フィルターの形状は、約45×22×10 kmの直方体、走向が10°、傾きが46°、上面(図4で青色の網部分)の中心位置(灰色の球):緯度35.82°、経度140.87°、深さ約8kmとしました。

震源断層データの検索期間を2011/03/11 - 2017/08/31に設定し、フィルター内のデータでも調和しない場合はカットして 44件のデータを得ました。 図3にフィルターに含まれるデータを描画しました。震源断層面の長さ・幅は拡大しています。

震源断層フィルターのチェック
震源断層フィルターを使い、「気象庁 一元化震源リスト」(「Hi-net 高感度地震観測網」の震源情報)から注目する2つの地震について震源分布を描画しました。
図4-1は2011/03/16 - 2011/05/31の期間、図4-2は2012/03/14 - 2012/05/31の期間の震源分布です。 赤色はフィルター内にある震源、灰色はフィルター外にある震源です。
設定した震源断層フィルターは震源分布を反映したものとなっています。

図3 フィルターによる震源断層データの絞込み

図4-1 フィルターに含まれる震源(2011/03/16 - 2011/05/31)

図4-2 フィルターに含まれる震源(2012/03/14 - 2012/05/31)

震源断層群と仮想断層面
図5-1は2011/03/16 M6.1とその余震(検索期間:2011/03/16 - 2011/05/31)、 図5-2は2012/03/14 M6.1とその余震(検索期間:2012/03/14 - 2012/05/31) の震源断層群を描きました。
黄色の面が震源断層群から求めた仮想断層面(走向:10°、傾き:45°)です。 別個の仮想断層面を求めるのか、共通の仮想断層面を求めるのかは、今後の課題とします。

図5-1 2011/03/16 M6.1とその余震の震源断層群(2011/03/16 - 2011/05/31)

図5-2 2012/03/14 M6.1とその余震の震源断層群(2012/03/14 - 2012/05/31)

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