能登半島北岸断層帯の震源断層領域


防災科学技術研究所(以下、防災科研)が解析した初動解データを使用して、断層の広がり、連続性を調べてみました。
2007年門前沖地震、2024年能登半島地震 M7.6をMainデータとし、初動解データから類似スペックデータを抽出するのですが、2024年能登半島地震は連動型なので、本震の初動解から得られる類似スペックデータだけでは全体を求めきれません。 今回は、活断層のスペック情報もMainデータに加えて抽出しました(表1)。
参考にしたのは、地震調査委員会 「日本海側の海域活断層の長期評価(令和6年8月号)」です(資料1)。
[類似スペックデータの抽出条件]
検索範囲のデータには横ずれ型もありますが、検索対象は逆断層型データに絞りました。
・Mainデータが初動解スペックの場合、走向差が15°内、傾き差が5°内、震源断層面との距離が5.0km以内のデータを抽出しました。
・活断層スペックの場合、活断層の走向、傾き情報から走向差が15°内、傾き差が20°内で、震源断層面との距離が4.0km以内のデータを抽出しました。
活断層スペックの場合、傾き差を20°内としたのは、震源断層面の傾きが中角度(45°)、高角度(60°)のいずれかで値が割り当てられているため、傾き差の条件を初動解スペックより緩くしました。そのかわり対象データと震源断層面との距離を厳しくしました。
※震源断層面との距離:検索対象の震源位置からMainデータの震源断層面に垂線を下したときの垂線の足の長さ。類似スペックの広がりをみるため、垂線の足の位置は、震源断層面の内部だけでなく外部でも可としました。
活断層初動解
図1 Mainデータ

表1 Mainデータ
No活断層走向、傾き No年月日Mag走向、傾き、すべり角備考
能登半島北岸断層帯 初動解(防災科研)
1猿山沖64°, 45° 52024/01/01M7.647°, 50°, 99°2024年能登半島地震
2輪島沖77°, 45° 62022/06/19M5.461°, 51°, 95°No.5の類似スペックデータ
3珠洲沖58°, 45° 72024/01/03M5.054°, 52°, 121°No.5の類似スペックデータ
門前断層帯 初動解(防災科研)
4門前沖62°, 60° 82007/03/25M6.958°, 66°, 132°2007年能登半島地震
資料1では、猿山沖区間の走向は47°ですが、ここでは Line形状から計算し、走向を64°としました。

能登半島北岸断層帯の類似スペックデータの分布

2024年能登半島地震より前の抽出データを描画すると、猿山沖で2007/03/25 M5.3、珠洲沖で2023/05/05 M6.5が発生していますが、M6レベルでは活断層の区間(セグメント)内での断層活動と見てとれます。
抽出データを通しで描画すると、輪島沖でデータが少ないものの能登半島北岸断層帯全体にわたって分布し、門前沖(門前断層帯)の北東部にも達しています。門前沖北東部分から珠洲沖まで地下では断層が関連していると思われます。
産総研(産業技術総合研究所)地質調査総合センターの調査によると、今回の地震で海成段丘が新たに形成され、能登半島北岸には大規模な海成段丘が4段認められています。各海成段丘の年代調査が進めば、能登半島北岸でのM7クラスの地震発生について明らかにされてくると思います。
期間:2007/03/01 - 2023/12/31期間:2007/03/01 - 2024/06/30
図2 類似スペックデータの分布

表2 主な類似スペックデータ
No年月日Magパラメータ
走向、傾き、すべり角
位置類似性と位置関係備 考
門前沖猿山沖輪島沖珠洲沖Main
12024/01/025.650°, 57°, 112°門前沖--53567
22024/01/264.452°, 62°, 130°門前沖--53769
32007/03/255.340°, 53°, 101°猿山沖----22673
42007/04/064.355°, 60°, 118°猿山沖---22781
52024/01/034.252°, 51°, 120°猿山沖-53630
62024/01/064.476°, 35°, 133°輪島沖---53679
72024/01/183.570°, 58°, 134°輪島沖-53744
82024/01/033.865°, 56°, 86°輪島沖-53598
92022/06/205.040°, 60°, 72°珠洲沖----51550
102023/05/056.541°, 56°, 83°珠洲沖---52598
112024/01/017.647°, 50°, 99°珠洲沖---53520
122024/01/035.054°, 52°, 121°珠洲沖---53612
132022/06/195.461°, 51°, 95°珠洲沖--51537
142023/05/055.950°, 43°, 98°珠洲沖---52603
152024/01/015.579°, 54°, 114°珠洲沖---53519
162024/06/036.072°, 55°, 118°珠洲沖--54407
○:類似性と位置関係OK、△:類似性はOKだが位置が離れている

門前断層帯 門前沖の類似スペックデータの分布

2024年能登半島地震より前の抽出データをみると、2007/03/25 M6.9の類似スペックデータは門前沖周辺で分布しています。 抽出データをすべて描画すると、類似スペックデータは能登半島北岸断層帯でもみられますが、連続性は猿山沖の一部までで弱い。

期間:2007/03/01 - 2023/12/31期間:2007/03/01 - 2024/06/30
図3 類似スペックデータの分布

表3 主な類似スペックデータ
No年月日Magパラメータ
走向、傾き、すべり角
位置類似性と位置関係備 考
Main門前沖猿山沖輪島沖珠洲沖
12007/03/274.144°, 63°, 127°門前沖----22694
22007/03/256.958°, 66°, 132°門前沖---22670
32024/01/025.650°, 57°, 112°門前沖--53567
42024/01/264.452°, 62°, 130°門前沖-53769
52007/04/064.355°, 60°, 118°猿山沖---22781
62024/01/264.348°, 65°, 91°猿山沖--53768
72007/04/263.968°, 65°, 108°猿山沖-22891
82024/06/036.072°, 55°, 118°珠洲沖--54407
○:類似性と位置関係OK、△:類似性はOKだが位置が離れている

震源断層領域

抽出した類似スペックデータの分布から、能登半島北岸断層帯と門前沖区間(門前沖断層帯)の震源断層領域を求めてみました。1933年M6.8、2024M6.4は領域外で発生しています。
図4 能登半島北岸断層帯の震源断層領域

[資料1] 地震調査委員会 「日本海側の海域活断層の長期評価(令和6年8月号)」
[資料2] 産業技術総合研究所 「能登半島北部沿岸域の活断層,海成段丘と令和 6 年(2024 年)能登半島地震の余震分布」


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