千葉・房総沖の震源断層領域


防災科研(防災科学研究所)の初動解データ等を使用して類似スペックデータを抽出。その分布から震源断層領域を求めてみました。(表1 ※高さの10kmは初期値固定)

表1 震源断層領域情報
領域断層型中心(緯度、経度、深さ)長さ高さ走向傾き備考
太平洋プレートの境界
領域11826逆断層35.68°, 140.85°, 46.33km60km60km10km184°22°銚子付近 bs11826
領域29806逆断層35.42°, 141.10°, 32.81km35km40km10km202°22°房総沖 bs29806
領域45677逆断層35.57°, 140.08°, 68.00km50km30km10km188°22°千葉中部 bs45677
領域10985逆断層35.68°, 142.13°, 11.00km40km20km10km189°29°関東はるか沖 bs10985
フィリピン海プレートの境界
領域23394逆断層35.44°, 140.53°, 35.00km40km20km10km258°10°九十九里浜沖 bs23394
領域35730逆断層35.24°, 141.37°, 20.00km40km20km10km289°29°房総沖 bs35730

図1にみるように、千葉・房総沖では、相模トラフからフィリピン海プレートが沈み込んでいます。 さらに日本海溝から太平洋プレートが沈み込んでいます。
緑色の領域23394、領域35730は、フィリピン海プレートの境界にあります。
水色の領域11826、領域29806、領域45677、黄色の領域10985は、太平洋プレートの境界にあります。

[類似スペックデータの分布]
領域11826では、銚子付近で繰り返し地震が発生していますが、類似スペックデータの広がりは弱い。 他の領域も類似スペックデータの件数が少なく、分布は局所的で弱い。(図は省略)
図1 千葉・房総沖の震源断層領域

震源断層領域と大地震

表2と図2から、
・1677/11/04 M8.0 延宝房総沖地震(表2のNo.1)は日本海溝近くの太平洋プレート境界で発生した津波地震。領域10985の外部なので連結はしていない。
・1923/09/02 M6.9(表2のNo.4)は、フィリピン海プレート境界で発生した1923/09/01 M7.9 関東地震の余震。領域23394の外部なので連結はしていない。
・2000/06/03 M6.1(表2のNo.8)、2005/04/11 M6.1(表2のNo.9)は、銚子付近の太平洋プレート境界で発生し、領域11826・領域19759の内部で連結している。
図2 千葉・房総沖の大地震
赤色:領域の内部で連結する 緑色:領域の周辺で連結する
水色:領域の延長で連結する 青色:連結しない 灰色:連結不明

房総沖の大地震

房総沖ではフィリピン海プレート、太平洋プレートの2つのプレート境界で大地震が発生し、沿岸地域では大きな津波被害を受けてきました。
[太平洋プレート境界の大地震]
 前掲の1677年延宝房総沖地震 M8.0(表2のNo.1)の発生から300年以上経過しています。
・海底活断層調査
 2012年、海上保安庁などの調査により、房総三重点付近で日本海溝沿いに南北に走る2本の海底活断層が確認されました。
・津波の痕跡調査
 2021年、産総研(産業総合研究所)などの九十九里浜での津波堆積物調査で、約1000年前に房総沖でM8クラスの地震・大津波が確認されました。
 3・11地震では房総沖まで破壊が進行しておらず、今後、太平洋プレートが房総沖でどのような沈み込みをするのか、注視されています。
[フィリピン海プレート境界の大地震]
・1605年慶長東海地震 M7.9は、津波データから、房総沖説と東海道沖説が提唱されています(日本の地震断層パラメーター・ハンドブック p.121)。 図3の1605/02/03 M7.9は、房総沖説の断層モデルを描画しました。
房総沖説の断層パラメータ:
位置(上端の左)走向・傾き・すべり角長さ・幅
34.18, 141.75, 1km 287°, 30°, 154° 150km, 100km
・1703年元禄関東地震 M8.2
「この地震では、1923年関東地震と対比して、房総半島南東海岸での隆起量および津波が大きかった」ことから、 3枚の震源断層面:(1)相模湾内の断層、(2)房総半島南端での近く隆起を起こした断層、(3)房総沖で大津波を起こした断層 がモデル化されました。(日本の地震断層パラメーター・ハンドブック p.124)
断層パラメータ:
--位置(上端の左)走向・傾き・すべり角長さ・幅
(1) 34.75, 139.85, 0km 315°, 30°, 153° 65km, 70km
(2) 34.98, 140.18, 0km 225°, 70°, 90° 40km, 30km
(3) 34.53, 141.13, 0km 300°, 30°, 135° 100km, 70km
・ゆっくり滑り地震
房総沖ではゆっくり滑り地震が繰り返し発生しており、国土地理院、防災科研などにより、 1996年05月 Mw6.4、2002年10月 Mw6.5、2007年08月 Mw6.6、2011年10月 Mw6.5、2018年06月 Mw6.2などが解析されています。
2018年06月の断層パラメータ:
位置(上端の左)走向・傾き・すべり角長さ・幅Mw
35.25, 140.95, 17km 259°, 20°, 112° 40km, 27km 6.2
図3 房総沖フィリピン海プレート境界の大地震


表2 データリスト
No年月日Mag走向、傾き、すべり角領域との関係備考
フィリピン海プレートの境界
41923/09/02M6.9----連結NGrec1711
71987/12/17M6.7349°, 69°, 163°連結NG千葉県東方沖地震 bs08133
142011/04/12M6.4304°, 77°, 162°連結NG銚子付近 bs30852
162012/06/06M6.3127°, 85°, 172°連結NG房総沖 bs36605
太平洋プレートの境界
11677/11/04M8.0----連結NG延宝房総沖地震 rec66
21895/01/18M7.2----連結NG rec194
31923/06/02M7.1----連結NG rec1494
51924/08/15M6.8----領域10985の内部 連結不明 rec2346
61937/10/17M6.6----連結NG rec10153
82000/06/03M6.1184°, 22°, 103°領域11826の内部 連結OK
領域19759の内部 連結OK
銚子付近 bs11826
92005/04/11M6.1210°, 18°, 120°領域19759の内部 連結OK
領域11826の内部 連結OK
銚子付近 bs19759
102005/07/23M6.0165°, 28°, 69°領域11826の延長 連結OK千葉県中部 bs20154
112008/05/08M7.0216°, 24°, 107°領域10985の延長 連結OK茨城沖 bs24331
122011/03/11M7.6209°, 31°, 92°連結NG3・11地震最大余震 bs28761
132011/03/13M6.6123°, 66°, -127°連結NG茨城沖 bs28935
152011/04/21M6.0214°, 26°, 121°領域19759の内部 連結OK銚子付近 bs31241
172013/12/23M5.7180°, 32°, 66°領域10985の内部 連結OK関東はるか沖 bs39809
Noの値は、年月日順です。
「連結OK」は、直接連結(リンクの次数 nth=1)、間接連結(リンクの次数 nth=2)を含む。


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